哲学対話のファシリテーション

昨日は以前に紹介した高校生が企画した中高生向けの哲学対話が開催されました。午前中はオブザーバーとして参加させてもらってきました。

詳しい報告はクラウドファンディングの返礼品なので気になる方は是非支援してください。

イベントは終わりましたが支援は2/16まで可能です。

目標金額を超えた分は2回目、3回目の開催資金になるんじゃないかと思います。


そんなわけで、何を書こうかなということですが・・・


対話が行われている中、全体を見ていた司会のU君と哲学対話の進行について少し話しました。

ちょうど前日にP4Radioの中の人がそんな感じのつぶやきをしていたので今回はそれについて書きたいと思います。


司会のことをファシリテーターと言ったりしますが、ファシリテーターとはファシリテーションをする人のことで、ファシリテーションとは「促進」という意味です。


ファシリテーションについては研究会があったりしてネットで検索するとファシリテーションについて書かれたサイトもたくさんあります。


しかしここで見つけられるほとんどは組織の会議のファシリテーションについてなのです。


組織の会議のファシリテーターと哲学対話のファシリテーターはまったく違うので注意が必要です!

組織の会議にもいくつかの種類がありますが想定しているのは、意見を出し合って何かを決める会議です。(会議の種類についてはコチラを参照)

この場合のファシリテーターの役割は、「参加者全員が発言しやすい場を作り、たくさんの意見を出すことでより良いアイディアを発見し、合意形成を行い、会議で決定したことに対して全員が主体的に行動できるようにすること」です。

※会議自体が盛り上がっても、決まったことに対して一部の人しかコミットせず、誰かが実行するだろうと他人事にするメンバーがいるならそれは偽物のファシリテーターです。

たくさんの意見を出させるためには相槌をうったり、オウム返しをしたり、いわゆるコーチングスキルを紹介しているサイトもあります。

しかしここでも注意しなければならないことがあります。

これらのコーチングテクニックは話を引き出すことにも使えますが、本来は信頼関係を構築するテクニックだということです。そういうことまで細かく書いてあるサイトだといいですけど。


さて、哲学対話のファシリテーターの役割とは何でしょうか?


それは・・・


哲学対話の目的によって違うのではないでしょうか?


哲学対話の目的は主催者によって違います。そしてそれが参加者の求めるものと一致しているとは限らないのが現状です。


哲学対話の主催側の目的にはどんなものがあるかというと

①テーマについての本質を考えることそのもの

②テーマについての本質を考えることで森羅万象の理(真理)を見つけること

③考える力を養うこと

④対話自体を楽しむこと

⑤コミュニティーづくり、チームワーク強化

などです。ほかにもあるかもしれません。


①と②は哲学です。③は哲学のための基礎力向上ともとれるので哲学かもしれません。

①と③を極めていくことで②に到達できるのでしょう。

④と⑤はどちらかというと対話が主役です。


①、②、③で大事なことは言うまでもなく考えることです。考えずに言葉が飛び交うのはおしゃべりとかわりません。


故に、哲学対話のファシリテーターの役割は「参加者に考えさせること」に相違ありません。


③においては「気づきに導くこと」です。

そのための手段としては

・問いを立てる

・問いを立てさせる

・視点を変えさせる

・多様な答えを出させる

・他者の意見を受け止めさせ、もともとの自身の考えと反応、融合させる

などが考えられます。具体的な手法は参加者のレベルや性格などに合わせて異なってくるので書けません。誰にでも通用する方法は多分ないでしょう。

これについてケースを細かく分けて書くと本が何冊か書けてしまうので今日は止めておきましょう。


しかし、組織の会議のファシリテーターと哲学対話のファシリテーターが全く違うということはわかってもらえたのではないでしょうか?


哲学対話に興味を持ち、ファシリテーションの重要性に気づいたときに、目的が全く違うファシリテーションの手法やコーチングスキルを習得して使ってしまうことがないよう気を付けていただきたい!




しかし、いきなり理想の哲学対話ができるかどうか考えてみるとこれも難しい。


そこで、何段階かステップを分けてやってみるのも有効かもしれないです。


例えば・・・

第1ステップ

・話したいと思ったならば話すことができる。

ファシリテーターの仕事は

話すことが苦手なメンバーに話すタイミングを与え、うなづきや合いの手を入れて話を受け止める姿勢を見せ、最後まで話させるようにする。

他者の話を全否定するメンバーがいたらフォローを入れる。

他者を傷つけるような言動があれば注意する。


第2ステップ

・他者の発言を聴くことができる。

・沈黙を恐れさせない。

ファシリテーターの仕事は

話の長いメンバーや自分が話したい欲求が強く聴く姿勢が足りないメンバーがいれば注意する。これらの発言時にはうなづきや合いの手を入れないなどの調整をする。

話すことよりも聴くことの価値の高さに気づいてもらう。

誰かの発言にかぶせる様に発言する人には注意する。変わらないようならば挙手制やコミュニティーボールなどを導入する。


第3ステップ

・新たな問いを立てることができる。

・考えを深めさせる。

ファシリテーターの役割は新たに出てきた問いが霧散してしまわないように工夫する。たとえば記録し可視化するなど。

発言がどの問いに対するものなのかを確認する。

結論が出そうになったら本当にそうなのか新たな問いを立てる。



といった具合の練習段階を用意するのです。


最初から理想の哲学対話にするようりもうまくいきそうです。

参考になりましたでしょうか?


さらに付け加えるなら・・・

ファシリテーターは初めのうちはファシリテーターの仕事に徹するのが良いのではないでしょうか?

対話に加わってしまうとどうしても参加者に対する観察力が落ちてしまうからです。




今日はここまで。

ご意見ご感想があれば是非コメントください。



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